■大賞受賞作品■
シンデレラ・リッチ
福井雅    
第一章

まあ、普通はないよな。ラーメンを食べに入って、20万円持って店から出てくることになることなんてさ。いや、いま考えればちょっとは何かが起こりそうな予兆はあった。あのマコトがあれだけ強引に晩飯のことで主張したのもそれだったかもしれない。とにかくあの日、マコトと俺は、大学のキャンパスで「マーケティング概論」の教室でまるでえさを待っているアシカみたいに二人で並んで座ったあと、それぞれがバイトに行ってから、いつものように夜の九時頃に待ち合わせた。腹が減ったのか、やたらマコトが時計を気にしだしたんで飯を食いに行こうってことになった。で、いつもの定食屋にいこうぜって言うと、マコトが、今日は「ラーメン日和」なんだって言う。いつものまじめな顔をしてどうしても今晩は中華風ラーメンが食べたいって言うんだ。いったいなんなんだよ、それって。
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